ドストエフスキー小説の楽しい読み方②各部のあらすじを予め掴んでおく意味

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↑前回の記事では、ドストエフスキー作品はどう読めば挫折せずに楽しく読めるのか、
読み方の姿勢を紹介しました。

今回はドストエフスキー最大の傑作と言われる『カラマーゾフの兄弟』を例に、
全体ではなく「各部のあらすじ」を先に掴んでから読み進めることの価値について考察します。
本ブログで、各部のあらすじも更新していきますので合わせて活用してください!

(もちろん、読んだ後に整理のためにあらすじを復習しておくのもおすすめです!この大長編、いろいろな事がありすぎて、どこが大事なのかわからなく、忘れてしまうからです。)

なんで全体のあらすじじゃないの?

「第一部といわず、『カラマーゾフ』全体のあらすじをよこせ!」そう意気込む方もいるでしょう。しかし相手は『カラマーゾフの兄弟』、大怪獣です。

全体のあらすじを読んだところで、そのあらすじに書かれている話はいつまで経っても出てきません。ウワサの「大審問官はまだか!」といってもまだまだ、第二部の後半です。
期待だけは膨らむのに、今読んでいる箇所がかすりもしない、「もしかして私、別の小説を読んでいる?」なんて疑っちゃうくらい、恐るべき事態になります。

つまり、実際に読み勧めていく上ではなんの役にも立たないのが、全体の概略なのです。
大企業に入って、大きな意義のあることをしているはずなのに、目の前の仕事がそれとどうつながっているのか全くわからない。そんな状況と似ているかも知れません。それじゃあ退職しちゃいます、積読しちゃいます。
第一部だけであらすじを掴んでいれば自分が今どこを読んでいて、メインストーリーはどんな流れなのかがわかります。安心して一つ一つを楽しむことができるのです。

あらすじ無しじゃ無理なの?

「あらすじのある人生なんて生きる価値がない!俺はあらすじ無しでいくぞ!」そんなツァラトゥストラさんもいるかとおもます、が、

「あらすじ無し」でいけるのかというと、これも難しい。
大長編であるがゆえに、普通の短い小説であればささいなところが、いちいち長いなのです。例えば1編はいわゆるキャラ紹介ですが、訳によりますがこれだけで70ページ前後あります。短い小説ひとつ分です。
こんなふうにサブキャラがぽんと出てきて、そのキャラの過去の話や世界観の説明がポーンと何十ページも平気で出ます。「これだけ説明されたならこれから大事になるんだな」と思っていたら、もう二度と出てこなかったりします。つまりその箇所はメインストーリーとは別個で、単品で味わい、噛みしめるべきものだったのです。

そんなとき、各部のあらすじを知っていると、まず焦りません。あらすじ、メインストーリーを自分で追っていく必要がないからです。次から次へと長いエピソードが出てきて、あれもこれもと覚えていたら大変に疲れます。それでもう二度と出てこなかったり、本筋じゃなかったりするのです。そうなると、前回の記事で紹介した、ゆっくりとドストエフスキーが描く「人間を味わう」ことなんてできません。

あらかじめあらすじを掴んでいれば、メインストーリーのスジに注意を向け続ける必要がなくなり、一つ一つのエピソードを集中し、味わって読むことができます。
この一つ一つのエピソードをどれだけ楽しめるかが、「ドストエフスキーを楽しめるか」でもあります!
全体のメインストーリーを楽しみたいだけなら、おそらくドストエフスキーの小説は恐るべき時間の無駄です。それなら勝手にヘッセをおすすめします。『知と愛』『荒野のおおかみ』が良いです。

自分が読む部のあらすじを掴んておいて、一つ一つを味わおう!

不幸なことに、これらの青年たちは、生命を犠牲にすることが、
おそらく、数限りないこうしたばあいにおけるあらゆる犠牲のうちでもっとも安易なものであることを理解していない
(『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー著、原卓也訳、新潮文庫、第1編五「長老」)

ロシアの青年たちを指してドストエフスキーもこう言っています。
「苦労しても良いから、あらすじなんて無視して体当たりしてやる!」と思い切ること、「早急な偉業の要求」は意外と簡単にできるものです。
しかし『カラマーゾフの兄弟』は決してその若い勢いだけでは倒せません。
ここは着実に、「早く偉業を成し遂げたい」という欲求をこそ犠牲にして、あらすじを把握してから、エピソードの一つ一つを味わい、ゆっくり自分の魂の中で噛み砕き、楽しみながら、読みすすめていくべきです。
『カラマーゾフの兄弟』や『罪と罰』という長編小説ではなく、連作小説を読む姿勢で読むのです。
別に全部読む必要なんてないくらいの気持ちで、自分が好きなところを部分でも、大切に。そうすればきっと、光り輝く細部に満ち溢れた一つの巨大な作品世界があなたの心の内に打ち立てられると思います。

また、自分が読む部のあらすじを読んで、読みたいところから読み始めるのも良いでしょう。冒頭でも言ったように、読み終えたところの整理のため、あらすじをを読むのでも、暗闇が晴れて道が見えてきます。

ストーリーの大きな流れは、それなりに小説を読んでからでないと、難しいです。全体の流れは、あとで楽しみにとっておくくらいの気持ちで、とにかく部分部分を楽しみましょう!それが読書の喜びです。

『カラマーゾフの兄弟』を読むために。第一部のあらすじと、把握しておくべき重要ポイント!↓

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ABOUTこの記事をかいた人

20代。早稲田大学を卒業。大学時代に生きることに悩み、哲学書・宗教書・文学書を読み漁った結果、頭だけで考えても仕方ないと悟り、臨済禅の坐禅道場で参禅修行を始める(4年間修行)。 2020年に(カトリック)教会で洗礼を受ける。 路上お悩み相談(コロナ禍によりお休み中)や、SKYPE相談・雑談、コーチング、生きねば研究室など、一対一の本音で対等な関わりを大切に、自分にできることをほそぼそとやっています。